モンゴルの歴史は、遊牧生活の歴史と密接に関わっています。現在のモンゴルの領土に人間が定住したときから、遊牧の文明とともに匈奴（フンヌ）と鮮卑（センピ）の歴史は築かれました。
モンゴル史上最強期はチンギス・ハンが1206年にモンゴル部族を統一させ、モンゴル帝国を創設し、アジアとヨーロッパを軍事力によって征服していたごろです。
チンギス・ハンの後継者たちは１３世紀までベトナムから東ヨーロッパまで領土を拡大し、人類史上最大の領土を占領しました。 モンゴルの騎兵は、西ヨーロッパ、イベリア半島、フィリピン諸島、日本諸島、カムチャツカ半島まで届きました。当時は、40，000，000ｋｍ²以上の総面積の領土を占領していた言われています。
モンゴル人は世界的に強大な国家になり、アジアとヨーロッパ間で前例のない文化と貿易を発展させましたが、遊牧生活を維持したままでした。 このように、1262年に、大モンゴル帝国はキプチャク、イル、チャガタイ三ハン国、元王朝4つのハン国に分裂し、16世紀までお互いの戦いと統一が続きました。このときモンゴル人は仏教の影響を強く受け始め、17世紀後半から18世紀半ばごろ、モンゴルは清王朝の支配下に置かれました。 20世紀初頭の1911年に清王朝が崩壊したとき、中国、チベット、モンゴルという３つの国はそれぞれは同時に独立しました。当時、モンゴルはロシア帝国の助けを借りて活仏を元首とする君主制人民政府を成立させ、1924年にはソビエト連邦の助けを借りて人民共和国を宣言したことにより、世界第2番目の社会主義国となりました。これ以降、モンゴルはソビエト連邦と並んで国を発展させていきました。 1989年の東欧で起きた革命はモンゴルにも影響を及ぼし、1992年にモンゴルは民主主義憲法を制定し、市場経済社会へと移りました。
冒頓単于
紀元前318年に、匈奴が他の国々とともに秦に侵入したと歴史的な記録は最初に述べられています。紀元前209年、冒頓単于は父の頭曼単于を殺して単于の位につきました。 単于は古代中国語で「広大なありさま」という意味ですが、モンゴル語の「良」という言葉の古代モンゴル語発音と解説する研究者もいます。冒頓単于は中央アジアの歴史上初めて、遊牧民を10人の兵士を動員する集団（十戸制）に分け、その集団を10個束ねて100人の兵士を出す集団（千戸制）にし、さらに千戸制、万戸制の集団にする仕組みに改め、遊牧社会の改革及び軍事的・行政的改革を実施しました。
冒頓単于はモンゴル草原の中央に本営を置き、それより東を左、西を右として、左賢王・右賢王などを置いて分治させました。これは最大の行政単位であり、賢王は特別な宮殿、私有地を持ち、単于から直接任命され、1000人以上の騎兵兵隊を指揮しました。研究者らは、匈奴の人口は150万人だったと推定しています。
匈奴は約30の大規模な戦いを行い、遠近の領土を征服し、最初の遊牧国家を創設しました。
冒頓単于は、「匈奴国家の存在は土地を所有することを意味する。土地は国の基本である」と宣言しました。紀元前198年、匈奴と漢王朝は「万里の長城の北方の騎馬遊牧民は単于の命令に従うべし、万里の長城の中は漢王朝皇帝が支配すべし」と定め、領土の境界について合意を作成し、初めて白い布と紙に色分けて地図を描きました。 漢王朝は毎年、金、絹、穀物など一定の贈り物を匈奴の王に50年間以上贈りました。
さらに、中央アジアのほとんどの国々を侵略し、それらの国から稲を徴収し、定期的に家畜および人口調査行っていたことから見ると文字を使用していたことが明らかになっています。公使が、文具を持っていたとの証拠は、ボルガンアイマク（県）・ブレンハンガイソム（郡）イエケ・ドラーンというところで発掘されました。
匈奴の首都であるルウトホト（竜の都の意味）は、現在のアルハンガイ県・ハシャートソムにあるオルホン川沿いにありました。匈奴の時代は主に牧畜業を行い、小規模な農業、狩猟、手工芸などもしていました。また、シャーマニズム信仰を持っていたため、5月と9月に天に犠牲を捧げ、単于は毎朝昇る太陽に毎晩月に崇拝していました。
チンギス・ハン（1162－1227）
チンギス・ハンは最初に部族、次に民族、そして最後に敵を統一させました。ほとんどの研究者はチンギス・ハンについて史上最強であったと賛成しています。
テムジンは1189年ごろモンゴル諸氏族の盟主に推され、チンギス・ハンの称号を贈られました。「チンギス」は「海」という言葉に由来し、王の権力は海のように無限であることを意味します。チンギス・ハンは16年間にかけてモンゴル全土を統一させ、最終的に1206年にモンゴル全土の大ハンの位につき、モンゴル帝国を建設しました。
また、公務に関与する権限を持つ4人の皇后と、その男系子孫はアルタン・ウルク（黄金の氏族の意）を構成します。チンギス・ハンの第一皇后、ボルテ・ウジンは4人の息子と3人の娘を出産し、これらの4人の息子とその孫は1634年までモンゴル帝国を統治していました。
チンギス・ハンは、占領国からの徴税、情報を受け取る一定の場所を作るため、オーラグ川の近くにいくつかの宮殿を作りました。これは後ほど「ホドー・アラル」と歴史上に残され、1197年から駐屯軍を作り、外国使節などの立ち入りを禁止しました。通信改善のために、駅伝制を作り、男性は軍隊服務の代わりに駅伝に服務することが許可されました。
チンギス・ハンの息子たちはウイグル人の学者に教えを受け、モンゴル帝国の公式の文字としてウイグル字を用いることにしました。当時、中国の漢字を使用する国が多かったが、チンギス・ハンがウイグル字を採用したことは、モンゴル国の文化を中国から切り離すための政策だったと言われています。彼が制定した帝国の基本法典であるイエケ・ジャサク（大法令）は、当時のモンゴル帝国の憲法であっただけでなく、中央アジアでの最初の憲法でもあったとされています。イエケ・ジャサク（大法令）の主な概念は、王または国家の尊重、王または国家への忠誠、法の遵守、公務員規則の遵守、高齢者に対する尊重、乳幼児の世話、そして平和について定めていました。
チンギス・ハンは、征服された国の善を勧め、悪を捨てる考え方に関して偉大な知恵を持つ人でした。 1206年にナイマン王国から捕虜された事務官であるタタトンガに命令し、伝国璽を創らせしました。また、他の国から著名な学者を招待し、様々な議題について議論していました。一例を挙げると、チャン・チョン・バンボという老僧と何度も会いました。そのため、チンギス・ハンは死亡前の8〜9年前ごろからが死後の国家統治について決め、指示などを残すことができました。
チンギス・ハンは1162年に現在のヘンティー県のオノン川近くのデルウンボルドッグで生まれ、44歳で大モンゴル帝国を創設し、1227年に65歳で亡くなりました。チンギス・ハンは故郷の土地に葬られ、その周りの地域が保護されました。墓地は、戦士に守られ、アルタン・ウルク（黄金の氏族）以外の誰もが入ることを禁止し「イェケ・コリク（大禁地）」と表記し、800年間、閉鎖されていました。墓地の周りでは狩猟、伐採、石の移動、小道や建物等の建設、旅行、道路や橋の建設はすべて禁止されていました。
20世紀半ばごろソビエト軍が、その近隣に駐屯したとき、「イェケ・コリク（大禁地）」は「厳重に保護された地域」と改名されました。その時から、猟師や観光客が訪れるようになり、遊牧民が移住し、チンギス・ハンの墓を探し始める調査団が増えました。
オゴタイ・ハン（1186－1241）
1225年にホラズム・シャー朝は、征服したチンギス・ハンはエルチス川方面でクリルタイを開催し、征服地を4人の息子に分けました。トルキスタンは長子ジュチの従地の領土とし、西遼の故地、中央アジア（マー・ワラー・アンナフル）を第2子チャガタイに、イリ川流域を中心とするナイマン部族の故地、北西モンゴル高原を第3子オゴタイにそれぞれ分与し、モンゴル本土は末子のトルイに譲り渡しました。
チンギス・ハンはホラズム征服後、誰が即位するかについて協議するためにクリルタイを開催し、最初にジュチの意見を聞きましたが、それに反対したチャガタイはジュチを口撃し、言い争いが起きました。気に掛けたチンギス・ハンは、ジュチとチャガタイを非に責め、話し合った結果オゴタイを後継者として指名しました。
チンギス・ハンの第3子オゴタイは1186年から1241年まで生きていました。チンギス・ハンは1211年に金を侵入するときオゴタイを連れて行ったことにより彼の軍事・戦争の生活が始まりました。彼はホラズム征服でジュチ、チャガタイ、ボールチと一緒にウルゲンチを侵入しに行き、1221年にインダス河畔でジャラールッディーンを破り、1225年に唐を征服する戦争にも参加しました。 1227年にチンギス・ハンが死亡した後2年間、トルイは国家を統治していました。1229年に開催されたクリルタイでチンギス・ハンの指名しておいたオゴタイを大ハン位につけた。当該クリルタイで金王朝の征服、モンゴルの使節を殺害した高麗の侵略、ホラズムの残りを破壊するなど西側の国境を安定させる目的を立てました。
オゴタイ・ハンは13年間国家を統治するとき、法令はクリルタイで審議することになり、国家組織の改善、領土の拡大、税法の制定などを行いました。1234年、金王朝を征服し、現在の韓国である高麗の侵略しました。
さらに1235年に首都カラコルム城を築き、宮殿を建設し、井戸掘りなどに積極的に取り組みました。彼の統治中に、冶金産業が発達し、多くの戦争兵器が生産されました。 1235年にジュチの第2子バトゥに西方への侵略を命じました。ロシア、ヨーロッパ各地を討たせ。オゴタイ・ハンの命令の下で始まった領土を拡大する取り組みとして、アジアとヨーロッパの広大な地域にわたるモンゴル史上の大規模戦争を始め、同時に両方の戦争に勝利を収めました。
グユク・ハン（1206－1248）
グユクは1206年にオゴタイ・ハンの第６皇后ドレゲネとの間に生まれました。1241年オゴタイ・ハンが死亡するとき、グユクは西で戦っていました。母親のドゥルグネ皇后は1245年にクリルタイを開催し、グユクを大ハン位に即位しました。
1246年2月23日、ローマ教皇の使節として派遣されたプラノ・カルピニは教皇からの手紙をグユク・ハンに送りました。その手紙は彼らの宗教を守ることを求めていました。使節プラノ・カルピニはモンゴル帝国について記載した報告書を教皇庁に提出しました。
プラノ・カルピニの勅書は、アジアについて正確で詳細な記録が分析できる希有な資料となりました。彼は報告書、「モンゴル帝国は私たち以外の世界のすべての国を制服した。私たちを攻撃する日も近い」と記載していました。
グユク・ハンからローマ教皇・インノケンティウス4世宛に送った手紙は現在のバチカン秘密文書館に保管されており、その写しはモンゴル国立博物館にもあります。1246年11月3日に送った手紙にグユク・ハンは教皇にモンゴル帝国に帰順することを求めました。手紙にはタタトンガによって作られた伝国璽も押されていました。この手紙は、モンゴルの外交関係に関する最も古い文書であると考えられています。グユク・ハンは1248年にサマルカンドの近くで亡くなりました。
モンケ・ハン（1209－1259）
モンケは1208年にチンギス・ハンの第4子トルイとその皇后ソルコクタニ・ベキの間に生まれました。モンケは永遠の青空の「永遠」という意味から由来しました。幼い頃から、モンケは数学とユークリッド幾何学に興味があり、4〜5ヶ国語に通じていました。モンケは、モンゴル民族から出現した最初の数学・幾何学であったと記載されています。
1251年に大ハン位に即位された後、税制度を改正し、100頭までの家畜は非課税とし、100頭ごとに１頭の家畜を徴税するようになりました。モンケ・ハンは家畜の頭数の増加、ゴビ砂漠の灌漑、遊牧民の定住化、牧草地の保護、家畜の品種改良・増加などに慎重に取り組んでいました。特に、馬頭数は常に監視していました。オゴタイ・ハンによって作られた駅伝をさらに改良し、様々な宗教宗派を支援する政策を実施しました。彼はカラコルムに４種類の飲み物が出る銀の木を建てたことは遠くから訪れた客の注目を集めていました。
1259年に合州の釣魚山の軍陣内で流行した悪疫にかかって1259年8月11日に死去しました。死後は、チンギス・ハンやトルイ・ハンと同じく起輦谷に葬られました。
フビライ・ハン（1215－1294）
彼はモンゴルの元朝だけでなく、アジアとヨーロッパなど、広大な領土を統治した世界的に著名な皇帝であると考えられています。モンゴルの政治家の中でフビライ・ハンほど高い地位を占めた者は他にいません。フビライは新しい国「元朝」を作り、現在の中国の基盤を作ったとも言えます。彼は東西間のシルクロードに、安全を確保し、世界の貿易発展に貢献した人物です。
フビライ・ハンは、世界で初めて法的に保証された紙幣を発行しました。紙幣はユーラシアの広大な領土において有効でした。当時のフビライ・ハンによって発行された紙幣は現在の米ドルと同じくらいの役目を果たしていました。
また、世界初の海軍を建造し、海運の発展の基礎を築きました。彼は大きな海軍を建設し、日本へ侵入し、インドネシアなどの太平洋諸島の小国を侵略しました。フビライ・ハンは遊牧民と古代中国人を両方を統治し、東西の交易圏を作り、世界の発展を新しい発展段階へと加速させました。
有名な旅行者のマルコ・ポーロは、フビライ・ハンについて「彼は高くもなく、低くもなく、穏やかな顔で、賢い人物でした。しかし、老年期にお酒が好きになりました。非常に賢明で、先を見据える人でした」と述べています。モンゴルの皇帝は正式に４人の皇后がいました。また妾もいましたが、妾との間で息子が生まれた場合、皇后になりました。フビライ・ハンの25人の男子は、州や都市の知事になったと記載されています。
