Biyelgee、物語を語るダンス

4 最小読み取り · May 16, 2022

Culture
Biyelgee、物語を語るダンス

朝日が出ると、その日差しを取り込んで作るお茶。自然とご先祖に感謝をする毎日の祈り。日々こなす遊牧民の日常。その仕草を民俗芸能にしたのがビエルゲー舞踊です。

馬頭琴で奏でるメロディーに合わせて踊る踊り子を見ていると、身体がひとりでに動き出します。ビエルゲー舞踊は肩を小刻みに動かす特徴があり、馬頭琴の音色と共に、その神秘な世界に連れ込んでいく力を秘めています。

手足の動きがそれぞれ、遊牧民の生活風景を描きます。遊牧民の日常に詳しくない方が見ると、分かりづらいところもあるかもしれません。

感情を身体の動きで表す、舞踊という素晴らしい芸術。「ビエルゲーを踊る時、心が歌います。」とビエルゲー舞踊名人が語ったほどです。

モンゴルの民族と部族は、それぞれの特色を出したビエルゲー舞踊を代々受け継いできました。その中で、オイラド・モンゴルと言われる民族と部族が特に高い踊りの技術持っていると言われます。オイラド・モンゴルのカザフ民はドンブラ、オリアンハイとトロゴード族はトヴショールの音色に合わせて踊ります。ドゥルベド、バヤド、ザフチン、ホトン族の踊りはエキルの勇ましいテンポにあった大胆な動きが目立ちます。常に進化を遂げるビエルゲー舞踊はそれぞれの風習や地域性を浮き彫りにしています。

その服装の特色を簡単に紹介します。トロゴード族は赤い飾りを垂らした帽子に、襟や裾の端を太い黒生地であしらった、ワイシャツのような四角い襟のデールとトーフーと呼ばれる靴を履きます。

トロゴード族の祝い唄とビエルゲー舞踊には、優れた馬と英雄を称え、自由な生活と先祖を敬うテーマが多いです。「アグサル」、「サヴァルダハ・ビー」などのビエルゲー舞踊は比較的自由な動きが特徴です。

バヤド・ビエルゲー舞踊も独自のニュアンスと作法があります。足をしっかりと踏ん張り、深くしゃがんで上半身だけで踊ります。その際に、デールの裾が全く震えないのが不思議です。「ジョロー・モリ」ビエルゲーを習ってから、一人前のビエルゲー踊り子になると言われています。

オリアンハイ族は「ムルグール」、「タタラガ」ビエルゲー舞踊を受け継いできました。ドゥルベド族のビエルゲーはメリハリのある動きが特徴で、年配者に対する敬意を表す動きで始まり、その動きで終わります。

ザフチン族のビエルゲー舞踊は頭部を動かしません。頭の上にミルク入りの茶碗をおいて踊ることもあります。中でも「エリーン・ゴルヴァン・ナーダム」舞が絶賛されています。

ビエルゲー舞踊ごとに物語があります。ホトン族の「セーテン男」では、愛の告白ができないある青年が大勢が集まった場で、舞踊を通して気持ちを表したそうです。モンゴル・ビエルゲー舞踊の特徴は老若男女問わず、できることです。日常生活の役割分担もビエルゲーの中で見ることができます。女性は身なりを整え、針仕事や子育てのシーンがあるのに対し、男性は馬を調教したり、皮の加工したりする様子を表現しています。遊牧生活とは切り離せない存在であるビエルゲー舞踊は、2009年にユネスコ無形文化遺産として登録されました。

モンゴル・ビエルゲー舞踊をギネスブックに登録すべく、5204人の踊り子が2013年7月10日にスフバートル広場で踊りました。民俗芸能「フグスー」楽団の主催によるこのイベントでザフチン族、ウールド族、ボリアト族、トロゴード族、オリアンハイ族、ドゥルベド族、ホトン族がそれぞれのビエルゲー舞踊を踊りました。参加者の最少年齢は3歳、最高年齢は92歳でした。 西モンゴルで地道に受け継がれて来たビエルゲー舞踊を研究し、舞台作に仕上げた舞踊監督のセブジド氏が今でもビエルゲーを語るのに欠かせない大事な存在です。セブジド氏の作品は国内外で多数公演されました。